読書メモ

佐藤良明(2019)『ニッポンのうたはどう変わったか: 増補改訂 J-POP進化論』平凡社.

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『ニッポンのうたはどう変わったか』を読了。20世紀後半に日本で流行した歌とそのルーツ、異文化起源のうたと混ざり合いのプロセスが分かって面白い。江戸時代からあった日本各地の民謡音楽、明治政府によって推し進められた西洋音楽の普及。アメリカからの徐々に流れ込む、ブラックミュージックやカントリーミュージックの影響、日本独自のポップソングの模索など。

面白いなと思ったのは、今の「演歌」は、昔は都市のブルース的なものに位置づけられており、60年代終わりごろの「演歌」となる点。著者が『天城越え』(石川さゆり)は「堂々としたロック」と言っていた。大衆消費社会の到来、ブルーカラー的な音楽の力(購買力含め)が増してきた文脈の中で、本書では音楽的無産階級の人びとへの新しい音楽を伝える存在として、森進一に高い評価がされていた。

戦後当初は、ヨーロッパ風に歌うトレンドが主流だったものの、ベンチャーズ、ディラン、ストーンズを通して音楽に触れ、ギターを手に曲作りをした戦後生まれの層によってロックやブルースが本格していき、更にはJ-Popとは何かを問う流れも出てくる。安室奈美恵と宇多田ヒカルの対比がなされていた。宇多田ヒカルは、R&Bを(日本的に取り入れるのではなく)完全に体現したアーティストと高く評価されていた。

アメリカ音楽史も詳述されていた。ポップ、ブラックミュージック、カントリーミュージックが、階級的・人種的対立を含みつつジャンル形成された過程。エルビス・プレスリーやビートルズの音楽実践が、群がる大衆の力で高級的な音楽体制をひっくり返した、階級転覆的な音楽実践であったということなど。

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