読書メモ

岡野八代(2024)『ケアの倫理:フェミニズムの政治思想』岩波新書.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

https://amzn.asia/d/gSlpsdm

『ケアの倫理』を読了。読み進めるだけで、日々の葛藤や後ろめたい思いに刺さる。と同時に、誰もが脆弱性(ヴァルネラビリティ)のある存在だと捉えることや、誰もがケアし/ケアされる社会とは何かと考える機会となった。個人的には、自分が産まれた瞬間を想起しつつ、どれだけ多くの人にケアされ今に至るかを振り返る意義を感じた。

また、現代社会に横たわる家族制度や家父長制の「構造が見えにくく巧妙な形」は、その影響力が結婚や出産の有無だけに留まる話ではないことも再認識。ただ、「私たちの身体が、常に何らかのケアを必要としている」と誰もが実感するには、ケアの射程をどこまで広く捉えるかという点は、私にとっての今後の宿題。

伝統的な哲学への批判は各所に見られるが、ケアの倫理が、理想の社会や、理想状態を前提に平等や自由、正義の理念を構想するのではなく、まずは現在の社会に位置づけられた私たちの生活の現実から社会を構想する(p.238)という話が、その差異を象徴していた。

民主主義制度が、誰かにケアする役割を任せ、排除してきたとすれば、「政治の担い手に求められる資質は?」の問い以上に、「誰がケアするのか?」の問いの重要性があることも分かる。自分自身の中に、生産性志向に走る一面を感じながら、辛く意義ある読書経験でした。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

English

コメントを残す

*

CAPTCHA