読書メモ

飯田一史(2023)『「若者の読書離れ」というウソ: 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか』平凡社新書.

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『「若者の読書離れ」というウソ』を読了。若者のイメージ、読書のイメージを揺さぶられる情報や、改めて考えたい論点も多かった。本書の主張としては、今の若者が読書をしない訳ではなく、むしろ読書量が増した点、多くの若者の読書離れの言説がデータに即していない点など。

示されてる全国学校図書館協議会の「学校読書調査」のデータ、ベネッセ、東大などが行う調査結果も興味深い。読書推進政策が子どもの読書習慣に与える影響の話、TikTokのバズりがあまり影響を与えていないこと、1960年代頃から高校生の月平均読書量は1冊程度(今と変わらない)という点も印象に残った。

中高生に読まれる本の3大ニーズの話や代表作のラインナップを知れるのも本書の魅力。その上で思うことが三点。一点目は、中高生の大半の読書が小説&一定の傾向性あるとすれば、大学での読書の薦め方にも示唆がありそう。中高生は一般書・教養書は読まないが小説に触れる。その可能性は大きい。

二点目は、本書で扱うデータについて。本書で扱う統計データの限界性に言及する場面が少ない印象を受けた。タイトルが非常にセンセーショナルだけど、国民の読書実態を真に把握する困難さは想像に難くない。回答率や回答の妥当性を含めて、データ分析とは何かを考えるきっかけになる気がした。

三点目は、「本を読む」とは何を指すのかという点。「不読率」という表現は分かりやすいが、「月平均何冊読むか?」と聞かれて答えにくい人は多いように思う。読書を「量」として測る難しさ。今のデジタル社会において、「本」と自覚なく読んでいる文字情報も多いし、読書とは何ぞやと考えさせられた。

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