読書メモ

浅羽通明(2006)『右翼と左翼』幻冬舎新書.

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『右翼と左翼』を読了。「右翼と左翼って何ですか?」の問いに答えようとした本。特に現代において「右と左」が分からなくなっている原因を、世界史・日本史含め、様々な視点から考察。著者の言葉選びや主張に批判の声もありそうだが、考える素材として面白い本とも思った。

左翼に関して「自由左翼」「権力左翼」「反抗左翼」の三分類(p.97.)は分かりやすかった。印象に残ったのは、フランス革命期の王党派に当たる右翼が、明治初期の日本にいないという話。また戦後日本史の独自の文脈にも考察が及び、世界史では「右」対「左」を「武装」対「非武装」の対比で捉えらえれる例はあまりなく、そこに日本文脈が濃く出ている。

日本の左翼が革命を起こそうとはせず、右翼が日米同盟を肯定する結論を選ぶなど、どちらの「正義」も犠牲にしたのが戦後「平和」主義だと評価してる。90年代以降は複雑化が進むと描かれる。90年代の日本の社会主義、共産主義が「サブカル化」したとも。

加えて、以前は右翼・左翼を単線で語れたのが、経済、政治、文化、外交・安全保障の4軸で分析する必要があり、それゆえ分かりにくくなっている。最後に、日本の左翼、右翼が、確固たる価値体系よりも、「敵」の存在から自分の存在理由を見つける「敵」依存の生き方ではないかと指摘されていた。

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