読書メモ

サトウタツヤ他編(2019)『質的研究法マッピング』新曜社.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

『質的研究法マッピング』を読了。質的研究の多様性を把握できていない私には、とても良い量感の本だった。多様な研究方法を四象限のマトリックスに整理。構造と過程、実存性と理念性の軸で捉えている。

テキスト化されたデータを分析する方法など、根本理念に親和性を感じるが、全文をコード化するのか、抽出的にコード化(?)するかなど、方法に多様性も感じた。システマティックにプロセスが決まっているものから、あえて自由度を設けているものもありそう。

印象に残ったのは、ナラティブには、ことばだけに留まらず、様々なビジュアルナラティブがある点。ビジュアル・ターン(視覚的転回)が調査対象者の時間認識への捉え方も広げる可能性を感じた。

その他、音声データを文字化する作業が分析プロセスの一部として、広く認められている点。混合型研究の哲学的前提にプラグマティズムがある点。アクションリサーチにとっての「理論」の重要性など。関係論の議論がされる際に、本来の良さを霧散させてしまう形での混同や折衷も目立つとされ、ポスト関係論の論点として、資本主義社会の次の社会の議論が次の転回たりうるとの指摘も。合議制質的研究法にも興味惹かれた。

「再現性が低いことこそが、正しく現実を表しているとも言える。」(p.270.)という点を何度も再考し続けたい。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

English

コメントを残す

*

CAPTCHA