『Jポップで考える哲学』を読了。Jポップの歌詞を哲学的に考察しようとする本。「自分」「恋愛」「時間」「死」「人生」の5点を合計15曲のJポップで考察。私も15曲は全部知ってたが、言われてみればこの歌詞どういう意味?という点も多く、哲学的な概念に繋がる展開が面白い。
一つ一つのJポップと哲学概念/哲学者の組み合わせはすごく大胆。「会いたくて震える」(西野カナ)とはどういうことか・・からの「欠如態としての共同性」(メルロ=ポンティ)。aikoの『キラキラ』から「未来を待つ」「注意を向ける」こと(シモーヌ・ヴェーユ)。『閃光少女』(椎名林檎)とバタイユを繋げたり、『おしゃかしゃま』(Radwimps)とキルケゴールを繋げたり、Dearest(浜崎あゆみ)とハイデガーを繋げたり。「決断」の重要性を指摘するヤスパースと『RPG』(SEKAI NO OWARI)とか、「群畜」「星の友情」(ニーチェ)と『Yell』(いきものがかり)とか。思わず全曲聴き直してしまった。。
二点印象に残ったことがある。一点目は、本書が、教育内容、教材、素材の関係を理解する上で、すごく良い本だということ。本書では、Jポップはあくまで手段なのだが、歌詞の一文一文にパワーがあり、それを通して哲学概念を教えていく流れは、素材と教育内容、それを結ぶ教材の関係を想起させる。
二点目は、Jポップの歌詞が、多くの人々(本書的には特に若者)の心に刺さるがゆえに、それを哲学的に考察する可能性を感じた。作詞者の世界観と本書の解釈が整合的かは分からないが、歌の歌詞という限られた字数の中で感性的なニュアンスも込めた表現が、豊かな解釈を生み出す面白さは伝わってきた。