読書メモ

荒木飛呂彦(2011)『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』集英社新書.

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『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』を読了。今年読んだ本の中で一番揺さぶられた感がある。ジョジョの著者である荒木氏が、自分が勧めるホラー映画約100本をジャンル別に紹介し、ホラー映画を見る意義を熱く語っている。万人が観るべきだ!という語りが独特な魅力を放つ。

私は超有名作以外、ホラー映画はほぼ観ない。ただ、著者は、ホラー映画が人生の醜い面や世界の汚い面と向き合う予行練習として最適だし、現実や人生にあり得る恐怖を相対化する機会になるという。さらには、芸術作品は、美しさや正しさだけを表現するのではなく、人間の「酷さ」だとか「ゲスさ」などの暗黒面も描き切れていないと、すぐれた作品とは言えないという。そして、ホラー映画の中に癒しがあるともいう。しかし、紹介される映画のシナリオ、場面紹介には、思わず表情をゆがめてしまう場面も多い。これらの映画を楽しく観る術はよくわからず、それが自分の経験不足なのかも併せて分からない。

ただ、建前じみた「正しさ」の議論とは別に、人生の不条理やどうしようもなさを芸術へと昇華したり、エンタメ化して楽しむべき、という話に妙に納得してしまう瞬間もあった。ただ、まだホラー映画を観たいとは思えない。著者が「嫌悪感を抱く」作品もあるようで、なおさら癒しとは何か考えさせられた。

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