『「新しい国民皆保険」構想』を読了。50年で3割も減る計算になる人口。複雑すぎて分かりづらい社会保障制度の問題を念頭に置きつつ、あくまで社会保障全体の解決案を示そうという姿勢を感じた。日本の社会保障システムは、保守レジーム、ビスマルク型とも呼ばれるが、同じシステムの世界各国の改革事例が示されている。特に長期的な展望をもって社会保険方式から税方式に移行していくオランダがすごい。
要点の私なりの理解としては、①日本の制度が、社会保険として成り立っておらず一般財源が大量に投入されているが、所得再分配機能が効いてない。②年金制度をはじめ、社会保険制度全体の逆進性の高さ、累進性の低さを批判。③基本路線は、税方式にシフトを目指し、中高所得者層への自助努力を促し、所得税の累進性を高めるべき(他の社会保険制度や控除制度の改革とセットで)、ということだと捉えた。
その他、色々な論点を改めて認識できた。例えば、離転職しづらい控除制度。被用者保険が雇用主に従業員を減らすよう促す構造。遺族年金や在職老齢年金の問題など。10兆円の予算を捻出する方法も示されていた。日本の政策論議は、エビデンスベースの議論が乏しいとあったが、本書では語られなかった政治的な合意形成のあり方にも興味惹かれた。