村上靖彦『ケアとは何か』を読了。最近、「ケア」という言葉を聞く機会が増えたが、本書における「ケア」の場面は、高齢者介護、重度の障害、虐待、暴力、貧困など、多様な事例が並び、非常に深刻な場面描写も多い。当事者が不条理にぶつかり、押しつぶされそうになりながら、ケアラーの存在によって語りえなかったことを語り、自分の生を少しずつ肯定していくプロセスが描かれる。
そのような困難さに寄り添う覚悟を要求される事例があるからこそ、ケアが周囲の人を巻き込む共同的な営みであることや、ケアという行為が<からだ>にアプローチするという意味も捉えやすかった。
逆境に苦しむ当事者が「助けを求められない」状況が複数示されている。声をかけ続け、声を聴こうとすること。それにより、当事者が自分の望みやニーズを自覚し、自分の位置を再定位し居場所を見出す可能性に繋がる。本書最後に、ケアの過程で自らも傷を負いやすいケアラーへの支援策も論じられていた。