デヴィッド・グレーバー『民主主義の非西洋起源について』を読了。特定の起源を解明してはいないが、西洋由来の民主主義観に問題提起をする本。相対的に平等な公共的議論のプロセスを通して自分たちの課題に対処するコミュニティのやり方という、広義の民主主義であれば、世界各地(例:アフリカやブラジルの農村コミュニティ、アメリカ先住民、インド、海賊など)で過去に観られたと論じている。
また「西洋的伝統」という概念も、様々な他地域からの影響のもとにできており、本書はその一貫性に疑問を投げかけている。むしろ、当初は「民主主義」の語を嫌っていた近代国家のリーダーたちが、あとから創り出した伝統という側面があるのではないかとも。その他、多数決というある種の特異な決め方が、暴徒を抑止する軍事力の話とも繋がるのが印象に残った。
著者は、国家のスケールでの民主主義を実践することの困難さを示し、国家の外で起こる民主主義的な実践や、異なる集団・共同体が交流・接触する際におこる民主主義的な実践に注目する。ある意味、本書の指摘に基づけば、民主主義と国民国家の関係性が当初からうまくいっていないことを示す形となっていると思うのだが、ではどこまでの妥協点で運営しうるのかという点は今後の論点でもある。
また、広い意味での民主主義が世界各地にあったと捉えた場合、アジアや日本にとっての民主主義とは何かという点も、考え続けていきたい。