読書メモ

加藤幸次(2022)『個別最適な学び・協働的な学びの考え方・進め方』黎明書房.

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目次は以下の通りです。

第1部 “個別最適な学び”・“協働的な学び”の原型を現代教育史に探る
第2部 「一斉授業・一斉学習」から「個別最適な学び・協働的な学び」へ
第3部 グローバル化する世界の中で現代的な諸課題に対応する教育課程を作る

個別化学習、個性化学習を含め、その日本への授業の第一線で長年活躍されてきた加藤氏による著作。
主に、個別化学習が登場したアメリカの文脈や、それを日本で導入した緒川小学校の例が多く語られています。

印象に残った点をいくつかメモしておきます。

一点目。
米国の教育の現代化の流れを、個別学習プロジェクトの文脈から説明している点です。
1960年代の個別学習プロジェクトが「学年制の自由進度学習」の性格を持っていた点(p.29.)など、興味深く感じました。オープンスクールに関する研究書が最近出ているようですし、学んでみたいなと感じます。

アメリカは1958年に国防教育法を成立させ、巨額の資金をもって、いわゆる「学校教育の現代化」運動を進めたのです。日本には、J.ブルーナーらの『教育の過程』や現代化された新教科書の紹介など「教育内容の現代化」の側面が大々的になされたのに対して、「教育方法の現代化」の」動きは、全くと言っていいほど、紹介されてませんでした。「教育方法の現代化」の動きは、具体的には、連邦政府が巨額資金を投じて支援した「個別学習」プロジェクトです。

p.14.

また、アメリカにおけるフリースクール運動の文脈や、その背景にもなったイギリス教育との繋がりにも興味惹かれました。

二点目。
緒川小学校の事例において、個別化を重視した学習や個性化を重視した学習が特に注目されやすい一方で、教科学習や一斉指導も一部においては行っている点、つまり、様々な学習形態が組み合わされて全体をなしているという点です。
それゆえに学校カリキュラム全体を論じることや、生徒の学びのプロセスの全体像を捉えることが重要になってくるように思いました。

四つの同一性を備えた一斉授業という指導法をすべて排除していないということです。たとえば、第一の「補充指導」という子に応じた指導は、たとえば、放課後の取り出し指導という形で戦前から行われてきた指導法です。さらに、必要に応じて、積極的に使うべきだと考えています。特に、必要な共通した知識・技能を習得させようとする単元、未知なる世界の探究の仕方を取り扱う単元、発達段階を考慮して事後の学習活動の準備となる単元などでは、むしろ、教師が主導して効率的に指導することが重要です。あえて言えば、学習指導要領の示す教科領域とそれにあてがわれている授業時間数は極めて大きく、すべての教科領域において「個に応じた指導」を行うことは、学校では、困難でもあるのです。

p.83.

ちなみに、緒川小学校が、1978年に全面改築してオープン学習を始めた際に、半数近くの教師が転出届けを出して出ていったという話(p.62.)には驚きました。今の緒川小学校があるまでに様々な壁を乗り越えてきたのだと推察されます。

三点目。
「個に応じた指導」と「共同的な学び」の関係性について。
緒川小学校の事例のように、個に応じた指導を重視する際に、個の学習の間に生じる自然な協働性にも言及しています。個の見取りと協働的な学びの見取りを両方行っているということを再確認できました。

実際、子どもたちの一人学習を見ていると、子どもは決して孤立して学習してはいません。常に教師や友達と関わりながら学習しているのです。

pp.114-115.

「個に応じた指導」はその名の先頭に「個」という言葉があることもあって、今回言われてきた“協働的な学び”を無視しているのではないか、と誤解されてきたかもしれません。繰り返し述べてきたように、実際には、“協働的な学び”は子どもたちの中の自然な行動として展開されてきました。私たちは集団主義を唱えるグループではなく、そのことを明文化せず、子どもたちの“自然”に任せてきたのです。

p.117.

以上です。

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