目次は以下の通りです。
はじめに
第1章 なぜ、「探究」が必要なのか
第2章 「探究的な学び」に必要な教師の思考
第3章 「探究」を引き出す学びのモデル
おわりに
日々、探究授業の実践に取り組んでおられる著者から、授業作りに関するコツや考え方、関連する先生方の実践報告などが載っています。
運営上のノウハウを知るうえでも、参考になります。
印象に残ったのは三点です。
一点目。
教科に関する探究授業について、何度も言及がある点です。
時間的制約もある中での知恵を感じます。
また、教科学習と総合学習とのつながりが、個別の生徒の「学びのストーリー」(pp. 100-101.)として紹介されている点も、高校での両者の繋がりのイメージを実感できることに役立っている気がします。
学習の対象や領域がその教科の内容になります。また決められた時間に扱うべき教科内容があるため、時間の制約があります。しかしそもそも学問は先人の探究の成果の蓄積で、その原動力は好奇心です。教科を学ぶということは、本来は探究的な学びに取り組むことと同じです。
p.18.
探究的な学びを進めることで、生徒たちは教科の学習と総合的な探究の時間のつながりにも気づきます。・・・(中略:斉藤)・・・Bさんは教科の学習と自分のプロジェクトを進めることで、これまで以上に各教科の学びにも興味を持って取り組むことができたとのことでした。そして経営学部への進学を希望するBさんにとって、実際に販売するというのは貴重な経験でした。
pp.28-29.
なお、本書を読んで少し思ったのは、教科学習を探究授業として説明する際に、従来的な発問と資料提示・解釈をするような授業スタイルと大きく異なってくるような印象を受ける点です。実践的な授業運営のノウハウが紹介されている故なのだとも感じるのですが、そこら辺の相性や関係性が気になりました。
二点目。
探究授業を教える教師側の現実的な時間についても言及がある点です。
総合的な探究の授業で、マイプロジェクトの個人探究のようなものが推奨される傾向があると思いますが、その指導体制と運営上の妥協点のようなものが気になっていました。その意味でも、現実的な意見を改めて確認できた気がします。
限られた時間にすべての生徒がそこまで到達できるでしょうか。私たちはこの視点を忘れてはいけません。もちろ時間が無限にあり、いつでも指導助言できるような体制があれば、どんな生徒も高いレベルの学びができます。しかし時間は有限で生徒が時間をかけたいことも様々です。スタッフにも限りがあります。この現実を考えたとき、文句なしに評定5となるような素晴らしい学びをする生徒はモデルであり、一人でも多くの生徒にそのレベルに到達してしいけど、それを全生徒が到達しなければいけないレベルとするのはお互いにとって良くないのです。これは普段の授業と共通している部分があるように思います。大切なことは、全員必須の最低ライン(評定で言えば2や3のレベル)は高くしすぎず、より高いレベルのことに取り組みたい生徒がどんどん学習を進めていけるような仕組みづくりなのです。これについては、ついつい口にする「せねばならない」を「できたらいいな」に変えるだけで大きく変わるかもしれません。
p.49.
三点目。
プロセス評価の重要性が指摘されている点です。
個人探究を伴走する教師の役割が強調されるなかで、プロセスの評価の重要性や意義が増しているように思いました。総合学習の評価論としては基本なのかもしれませんが、改めて再認識できました。
このような生徒の成長という成果については、生徒に伴走している私たちにしか見取ることができません。そして成果物にばかり目が行くと、ここを見落としてしまう危険性があります。しかし、総合的な探究の時間の意義は、成果物の良し悪しではなく、生徒が自分なりに課題を設定して沿えrを深める学習を体験し、学習を通じて成長するかどうかで決まります。大切なのは学びの結果ではなく学びのプロセスなのです。
p52.
その他、ちょこプロの実践であったり、研究論文を書かせる探究学習、さらには、大学受験との関係なども罹れていて、興味惹かれました。