目次は以下の通りです。
第1章 いま、いろいろ大変だぞ民主主義
第2章 私たちの暮らしにつながっているぞ、民主主義
第3章 先人たちが作ってきたぞ、民主主義 世界編
第4章 先人たちが作ってきたぞ、民主主義 日本編
第5章 いまから、あなたにできること
宇野先生の『民主主義とは何か』と共通する内容。
マンガなども組み込まれ、非常に読みやすい内容ですが、気づきも色々とありました。
本書では、デジタル社会と民主主義の関係について、多少強調して書かれているように感じました。
エコーチェンバー(p.30.)や、AIに支配される専制社会の到来(p.33.)への懸念が述べられていますが、一方で、デジタル化による政治参加の期待も述べられています。
現代では政治参加といえば、選挙や住民投票といった機会しかありませんが、ITとデジタル化によってこれらもいずれ変わります。これまで表に出なかったさまざまな人の声が可視化され、普通の人々の発想が反映されやすい環境が整いつつあります。そうなれば、その環境を利用してぜひ声を届けていきましょう。
p.148.
民主主義における「公開による透明性」(p.147.)「情報の公開性」の重要性についても、何度も出てきました。
議会は政府のやることに「公開性の光をあてること」が役割だとジョン・スチュワート・ミルが述べていること(p.50.)や執行権をしっかりとチェックし肥大化を押さえることに重要性があること(pp.66-67.)なども関連して読めました。
また、本の後半では、現状の日本の民主主義制度の代替案となりうる候補案がいくつも紹介されていました。「いまある仕組みを「あたり前」だとなんとなく思い、なかなか既存の制度を改められずにいるのが現状です」(p.126.)と述べらたうえで、決め方のオルタナティブ。ボルダルール、分人民主主義、世代選挙区、決選投票の仕組み(pp.133-136.)など、様々に紹介されています。
その他、改めて気づきがあったのは以下の点。
・アテネの民衆裁判の話。6000人の陪審員がくじ、抽選で選ばれていたこと。(p.45.)
・多数決という仕組みを機能させるのであれば、いくつかの前提が必要であり、例えば、古代ギリシアではあくまで公の場で緊張感のある議論を尽くしたうえで多数決をとっていたこと。(p.59.)
・アメリカの初期の指導者たちは、政治は高い知性を持つ少数のエリートが行うことを理想としていた一方で、トクヴィルのみたのは、普通の市民が自らの地域の課題を自分の事として捉え、強い関心をもって問題解決に取り組んでいるすがたであったこと。(pp.96-97.)