目次は以下の通りです。
はじめに――コモン・マンの思想
第1章 デューイの思想形成――生きることと学ぶことへの問い
第2章 シカゴ大学実験学校の挑戦――学校と社会をつなぐ
第3章 民主主義と教育の再構成
第4章 日本と中国への訪問
第5章 教育の公共性と民主主義
第6章 コモン・マンの教育思想
おわりに――現代に生きるデューイ
デューイの思想や生涯について、バランスよく論じられた本です。
幾つか感想をメモしておきます。
一点目
デューイが二元論的な議論を越えた捉え方を目指していたことが各所で説明されてます。新教育か旧教育か。教科か子どもか。知識か関心か。民主的か非民主的か。といった分かりやすい二項対立ではなく、両者をつなぎ合わせる関係性にこそ注目していた点を改めて実感させられました。とりわけ、今回読んだ中では、デューイが一時期傾倒した、ヘーゲル主義、ドイツ観念論の中にそういった関係論的な発想の萌芽が見られる点(p.11.)が印象に残りました。そのような文脈の中で、教科を領域概念ではなく、関係概念として捉えていたこと、(p.54.)を再確認することが出来ました。
二点目
活動家としてのデューイの生涯が多く語られています。例えば、女性参政権やマイノリティの権利運動、人種問題などにどのようにデューイが関わっているのかなど。そのほか、第一次大戦への米国参戦を最初は賛成し、それが理由でジェーン・アダムズらと袂を分けたうえで、参戦に賛成したことを後年に後悔したという点も印象に残りました。世界各地の調査や滞在も頻繁にしていることが分かります。ニューディール政策をはじめ、各時代の政策に提言や批判を行う場面も何度も言及されており、デューイが各時代の流れを自分なりに捉え、活動し発信していたこと、研究者としての面だけでなく活動家としての面もあったことがよく分かります。
なお、デューイの日本滞在時の講演が、案外評判が悪かったという話は笑ってしまいました。ただ同時に、デューイによる日本理解(日本人は移ろいやすく、細心の流行に従おうとした利、表面的な受容に留まったり、反対のものにも転向しがちなこと(p.126.))には考えさせられます。
また、アートを「民主主義の文化的基盤」として位置付けた点(p.209)についても、詳述されています。
勉強になりました。