面白い論文を読んだのでメモ。
スタンダード時代における社会科のカリキュラム作りを促すアメリカの動向が研究されています。
本書では、ビッグアイデアを軸にしたカリキュラムづくりから、問いを軸にしたカリキュラム作りへと移行しつつある動きの背景や意図について考察しています。
近年、後者のグラントらは、両者の差異を明確にし、「観念」を中核にカリキュラム設計について考えるよりも、「問い」を中核にしたカリキュラム構築に重点を置いている。なぜ、このような重点変化が起こったのか。ここには、近年のスタンダードに基づく教育の限界性を乗り越えようとする目的が垣間見える。
p.218 ./
この変化の背景や考え方が論じられていきます。
詳しくは論文で詳細が語られています。
結論としては、以下の通りです。
アメリカのスタンダード時代における「重大な観念big idea」消失の意味は、①学術的厳密性に偏った「本質的な問い」とは異なる、生徒の参加やレリバンスを伴った魅力的で多様な「compelling question」を構想したこと、②「ビッグ・アイデア」の問いと一般化の定義のうち、両者の問いを前景化し、社会科的な探究のモデルに適応させたこと、③スタンダード時代において、示された内容だけでは意味のある単元づくりが難しいことから、生徒にとっても教師にとっても魅力的な問いの構想から始めること、へと展開している。
p.228 .
分かりやすく、説得力もある内容でした。勉強になります。
最近のアメリカ社会科の動向を意味づけてもらえるという点でも、とても参考になりました。
個人的に特に印象に残ったのは、単元の問いを作っていく際のチェックリストの焦点化についてです。三点に絞られた問いの組み合わせが自分に置き換えて考えても非常に有効なようにも思いました。
2では、単元として関連する一連の問いを考えていくことが求められている。ここでは、第3版から第4班への移行でチェックリストが焦点化されている。「なぜ生徒がこの観念に興味・関心を抱くのか」「生徒たちにどのような活動や経験をしてもらいたいのか」「自信が理解してほしいことを生徒が理解しているかどうかいかにして知ることができるのか」の三点に絞られ、魅力的な問いの作成に向けてスタンダードの項目だけでなく、生徒のレリバンスに配慮していく。
p.226.
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