2018年度 教育課程論

第1回 カリキュラムとは何か(1):大学生活の学びの履歴を振り返る
カリキュラムとは何か?を振り返る授業です。カリキュラムに何種類かの定義があることを説明した後、計画されたカリキュラムと経験としてのカリキュラムの違いを体験するために、模造紙と付箋でアクティビティをしました。模造紙には、数年間の教職で学んだ授業の流れと大まかな内容を書いた上で、履修者にとっての、これまでの学びの記憶・印象を付箋で書いて貼っていってもらいました。それによって、計画したり意図したカリキュラムと実際に学習者にとってのカリキュラムが異なることを説明しました。

第2回 カリキュラムとは何か(2):学ぶ「べき」内容とは何か
『セイバートゥース(牙トラ、旧石器時代)のカリキュラム』という本の要約を読んでもらい、人類の技術が進歩する中で、「教えるべき内容」のとらえ方が変わり、カリキュラムが「主戦場」となることをイメージしてもらいました。授業の後半では、この話で出てきた、社会的ニーズや形式陶冶に関するキーワードなどを基にして、履修者にとって重なるような経験がないか、議論をしました。振り返りとして、「レリバンス」の概念を使って、「即自的」「将来的」「個人的」「社会的」の四象限の軸で学ぶべき内容の議論を整理できるという話をしました。

第3回 カリキュラムの歴史(1):総合学習と教科について
授業の前半では、既存の9教科の科目を用いて、ダイヤモンドランキングゲームをしました。ランキングの順位を決めてもらった後に、その理由について意見を共有しました。教科が誕生した歴史停な背景について簡単に説明した後、カリキュラム編成の仕方には、教科カリキュラムと経験カリキュラムの二通りがあることを説明し、校舎の事例としてシカゴの実験学校の例を提示しました。その上で、教科カリキュラムと経験カリキュラムのいずれが自分は好みかを決めてもらい、その理由について議論しました。

第4回 カリキュラムの歴史(2):カリキュラム作りの構成要素の多様性
履修者には、事前に小林誠著『アクティブラーニング 学校教育の理想と現実』(講談社、2018年)と海老原治善『民主教育実践史―国民教育創造のために』(三省堂、1968年)の抜粋資料を読んで、要約・感想文を書いてきてもらっています。授業の導入でサドベリーバレースクールの紹介動画を見せ、生徒が自分で学ぶ内容を決めるやり方についての賛否を聞いた上で、戦前のドルトンプラン、奈良女子附属小、戦後の川口プラン、経験主義教育批判などの事例を検討していきました。まとめとして、カリキュラづくりの構成要素として、「科学」「子ども」「社会」があることを指摘し、三つの要素で三角形を作った上で、この一時間で紹介したカリキュラム例がどの要素に偏っているかについて整理しました。

第5回 カリキュラムにおける評価論:何のための評価なのか
履修者は、事前に黒澤明監督の『羅生門』を視聴してきています。授業の最初に映画の感想を共有し、今日の授業のテーマが「工学的アプローチと羅生門的アプローチ」であるという話をしました。その後、ビジネス系の自己啓発本を例に出し、何かの目標達成を目指す際に、「行動目標を立て、それを遂行していくスケジュール方法のメリット・デメリットとは?」と題して議論しました。西岡加名恵『新しい教育評価入門』(有斐閣、2015年)をテキストにして、相対評価と絶対評価の違いを整理し、「目標に準拠した評価」と「目標にとらわれない評価」のいずれが良いと思うかについて、事例をもとに議論をしました。

第6回 教科書分析と単元計画の事例検討
中学校社会科の教科書の目次の項目だけを箇条書きにした資料を履修者に渡した上で、その箇条書きをどういう風に区分け・分類すると説明がしやすいかを考えてもらい、発表して貰いました。その上で、教育内容には大まかなまとまりとしての「単元」としての考え方があることを説明しました。その次に、単元の流れを意識する試みとして、パフォーマンス課題について紹介しました。一単元の総括をするためには、ゴールになるような最終課題の設定がいること、そして、その最終課題を達成するための、スキルや知識、思考の訓練をするプロセスとして、単元を構成すべきであるという話をしました。その他、ビジネス書の内容などを紹介しながら、PDCAサイクルを回すためには、ゴールを意識した計画を立てることが重要であるという話もしました。その上で、履修者にとって身近な教科の例を出して、パフォーマンス課題と単元計画を作るように、第8回の授業に向けての課題(宿題)の条件や詳細を提示しました。

第7回 見えないカリキュラムと権力:学校と都市設計の対比から
授業の最初に、パノプティコンという考え方に基づいて作られた刑務所の設計を見せました。その上で、なぜこのような刑務所の作りにしたのかを考えてもらいました。関連する事例として、アンチ・ホームレス建築の事例を紹介し、「アーキテクチャ」の考え方を紹介しました。その次に、宮本健市郎著『米国の時間と空間の教育史』を参照しながら、米国教育史における「教会モデル」「工場モデル」「家庭モデル」の特徴を説明し、履修者にまとめてもらいました。この事例を通して、学校や教室の設計自体が、授業のあり方を規定しているという点に注目しました。その上で、「工場モデルと家庭モデルのどちらが良い教育だと思うか?」をテーマにして、意見交換を行いました。

第8回 単元計画構想の発表と振り返り
履修者が作成してきたパフォーマンス課題と単元計画について発表してもらい、自己評価をしてもらいました。
その上で、これまでの授業の振り返りとして、「カリキュラム」というキーワードに据えた、マインドマップを作ってもらい、そのマインドマップの特徴や意図について、履修者自身に説明してもらいました。