読書メモ

山岸敬和(2014)『アメリカ医療制度の政治史:20世紀の経験とオバマケア 』名古屋大学出版会.

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山岸敬和『アメリカ医療制度の政治史』を読んだ。前半で20世紀前半の医療制度の論争史を扱い、後半に通称オバマケアの導入過程を分析している。本書導入で、日本の社会保障論議は財政や短期的な問題解決の議論が中心で、米国のように国家像に根差した議論は少ないとする。

医療保険の歴史から、連邦政府の権限の大きな医療政策に対する批判として、「社会主義的医療」の語が用いられてきたこと、それ故、医療制度改革の際に絶えず建国理念との対話が求められてきたことがわかる。例えば「それは自己責任だ」ではなく「政府による個人の権利侵害だ」という感じか。

本書では、各時代の大統領時代の合意形成を巡る苦悩の描写もあるのだが、その際に司法、立法、行政のパワーバランスの問題に焦点が当てられていた。とりわけオバマケアの際の連邦裁の存在感が大きく感じた。その他、超党派の合意形成を形成する際の交渉、大統領と議会の交渉なども印象的。

著者も述べている通り、日本ではアメリカの医療政策は「特殊例」として扱われがちのように私も感じるが、その論争史には独特の「熱さ」や「過激さ」のようなものがあり、日本に置き換えたそれとは何なのだろうかと考えさせられる。2014年に書かれた本書以後の展開も改めて気になった。

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