論文メモ

2024年1月の論文メモ

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星瑞希, 鈩悠介, 渡部竜也(2020)「「歴史する(doing history)」の捉え方の位相」『日本教科教育学会誌』42(4), pp.25-37.

中村洋樹(2021)「生徒と歴史教育との学習レリバンス構築のための主題的歴史カリキュラムの構成―“Teaching U.S. History Thematically”を手がかりにして―」『四天王寺大学紀要』69, 85-107.

上記論文の抜粋
「歴史総合」のカリキュラムを見据えた実践研究や提案には、川島の実践研究のように、生徒にとっての学ぶ意味・意義や生徒の受け止めを踏まえたカリキュラム開発の事例も見られる。しかし、全体的には、近現代史重視という内容構成面、あるいは、生徒主体の授業形態や学習方法に関心が集まり、生徒と歴史教育との学習レリバンスの構築という点への関心は低い。以上のような実践研究や提案の動向を踏まえると、歴史学の論理だけではなく、また単なる生徒主体の学習方法に還元するのでもなく、生徒と歴史教育との学習レリバンスの構築に主眼を置いた主題的歴史カリキュラムに関する研究を進める必要がある。

p.88.

(『米国史を主題的に教える』のカリキュラム構成の特質について)
第一に、アメリカ人のアイデンティティに関する本質的な問いをカリキュラムの中学にした上で、各単元において政治、経済などの分野において時代を超えて問われてきた本質的な問いを設定している点である。・・・(中略:斉藤)・・・第2に、主題ごとに過去200年の米国史を繰り返し学習していくカリキュラム構成になっている点である。

p.94-95.

(単元構成の特質について)
第一の特質は、現代的課題の問いを探究することからスタートして、本質的な問いを探究する構成になっている点である。本カリキュラムは、どの単元においてもまず主題に関連する現代の事例を学習した上で、過去200年の米国史を学習することになっている。

p.99.

中村洋樹(2017)「中等歴史教育における真正の学習と歴史的議論の論述 ―“Reading, Thinking, and Writing About History”  を手がかりにして―」『社会科研究』87, 1-12.

河野大樹(2022)「社会科授業観を教師が問い直す授業省察モデルの再構築」『広島大学大学院人間社会科学研究科紀要. 教育学研究』3, 376-385.

中村洋樹(2015)「歴史的に探究するコミュニティの論理と意義」『社会科教育研究』124,1-13.

中村洋樹(2016)「真正の歴史学習における歴史学的概念の学習原理-B. A. レッシュの授業実践を手がかりにして-」『日本教科教育学会誌』39 (1),49-58.

金鍾成, 山口安司, 久保美奈, 鈩悠介, 城戸ナツミ(2021)「自らの国の愛し方を批判的に検討できる市民を育てる中学校社会科授業のアクションリサーチ-ナショナリズムと批判的パトリオティズムを概念的枠組みとして用いて-」『社会系教科教育学研究』33, 51-60.

上記論文の抜粋
筆者らは、理論と実践をともに示すことができるアクション・リサーチ、そのなかでも「デザイン原則」を重視するデザインベースド・アクションリサーチ(以下、DBAR)を行った。DBARは、問題状況を改善するための諸理論からデザイン原則を抽出すること、その原則を生かした介入を計画・実践すること、その結果を省察しデザイン原則と介入の改善を図ることからなる研究方法論である。DBARは従来のアクションリサーチでは主体の暗黙知の領域にあったデザイン原則を学問の領域で議論することで、理論と実践のスムーズな接続、また提案された介入のより広い文脈での適用を支援する。

p.52.

「対話」コードの取り扱いについて、前節で論じたように、「対話」コードだけでは、批判的パトリオティズムを担保することができない。相手の対千葉を踏まえて相手との話し合いを試みる。「対話」コードは、他者に開かれた国の愛し方になる可能性を秘めているものの、それは同時に他者を説き伏せるための話し合いになってしまう可能性をも秘めている。よって、批判的パトリオティズムを四顧しようとする社会科授業では、「対話」コードだけではなく、批判的パトリオティズムの本質が集約されている「分離」コードをも同時に出現するように、批判的パトリオティズムの概念を獲得・活用させる際の工夫が必要である。

p.58.

粟谷好子(2018)「教育実習生の中等社会科授業構成能力を評価するルーブリック開発のアクションリサーチ : 実習指導Bを対象として」『広島大学大学院教育学研究科紀要. 第二部, 文化教育開発関連領域』67, 57-66.

金鍾成(2016)「「対話型」国際理解教育への試み ― 日韓の子どもを主体とした「より良い教科書づくり」実践を事例に ―」『社会科研究』84, 49-60.

上記論文の抜粋
ハーバーマスが言うように、「知識としての他者理解」から「自己と他者の相互理解」への転換は、他者を理解の対象として捉える「主体ー客体の対話」から他者を対話の相手として捉える「主体ー主体の対話」への変革だとも言える。本仮説を証明することで国際理解教育における「真正の対話」の価値を再発見することができると考えられる。

p.52.

日韓関係における教科書は、その緊張関係を高める主な「犯人」としてみなされてきた。しかし、本研究では他者の視点が反映されている対話の媒体として教科書を再解釈し、その効果を証明した。このように教科書は、特に緊張関係にある国々において他者の視点を伝える「真正の対話」の媒体としての可能性を示したのではなかろうか。

p.60.

小野創太(2021)「「困難な歴史(Difficult History)」を どのように探究すべきか ―「批判的社会文化的アプローチ」による歴史授業デザインの変革―」『社会科研究』95, 25-36.

上記論文の抜粋
Perotta(2016)での生徒の反応を見ると、マジョリティである白人とマイノリティである黒人の生徒には差があったことがわかる。特にマジョリティの生徒に対しては自身の件緑政を意識させる必要があるが、自らの見解が覆されることへの抵抗も予想される。「困難な歴史」が「困難」となる所以は、特にこうした見解が対立することで生じる感情的な次元にある。この感情的な次元を実践の前提としたうえで、感情的なファシリテーションを行うことが求められる。

pp.33-34.

これまで歴史教育者協議会の実践者など(平井, 2017; 安井, 2008)が生徒の感情と「困難な歴史」となり得る歴史的事象(慰安婦問題や太平洋戦争など)の分析をつなげる試みを行っていたが、その論理が実践者の経験則によるものに留まり、学術的な研究の俎上に載せられて来なかった。本稿はそれを検討する地平を開くものとして意義がある。

p.34.

星瑞希, 小野創太, 松村一太朗, 渡邉和彦(2020)「現代社会における歴史論争問題に取り組むための授業構成-セイシャスらの「歴史的思考プロジェクト」に着目して-」『社会系教科教育学研究』32, 91-100.

上記論文の抜粋
HTPでは、セイシャスら歴史教育研究者を中心に授業開発の指針を示し、それを踏まえて現場の歴史教師が自らの(生徒が)置かれた文脈に沿って具体的な単元プランや評価プランを作成している。セイシャスらが具体的な単元プランを作成していない背景には、同じ歴史事象であっても地域や学校の文脈によって歴史に付与される意味が異なるためであると考えられる。また、セイシャスらが現場教師の自主性や主体性を重視していることもその要因である。

p.92.

生徒が主権者として歴史論争問題に対峙するためには,歴史的思考を用いて過去の文脈を丁寧に探究しながら,過去(の歴史事象)が現代の歴史論争問題に与える影響を考察し,現在にまで影響を与える歴史事象に対して私たちはいかなる責任を果たすべきかを考えていく必要がある.

p.92.

歴史意識を前提に歴史的指向を概念化するHTPでは、歴史的思考を構成する6つの概念が設定されている(表1)。6つの概念とは、①「一次資料の証拠」(史資料を見つけ、選択肢、文脈化して解釈する方法を身に着ける)、②「原因と結果」(歴史的状況やある人物の行為の原因と結果を考える)、③「歴史上の他者の理解」(社会的、文化的、知的、そして当時の人びとの感情的な文脈の中で、異質な過去を理解する)、④「継続と変化」(過去から今にかけて何が変化し、何が継続しているのかを考える)、⑤「歴史的意義」(歴史的事象の今日的な意義を考える)、⑥「倫理的側面」(過去を現在における倫理に照らし合わせてどのように判断するかを考える)である、①~③は資料読解を通して過去の文脈を明らかにするための概念(以下では、「過去概念探究」)となっている。一方、⑤~⑥は大衆の歴史意識を前提にしており、現代社会において人々がいかに歴史を用いたり、歴史に向き合っているかを探究する概念(以下、「現代概念探究」)となっている。また④「継続と変化」は過去と現代を比較することで過去の探究と現在の探究をつなげる役割を果たしている。・・・(中略:斉藤)・・・HTPで開発された単には「過去探究概念」のみを用いて過去の文脈を明らかにすることのみを狙った単元もあるが、開発された単元の大半は、「現代探究概念」と「過去探究概念」を組み合わせて、現代社会における歴史論争問題に生徒が取り組むことを意識した授業構成となっている。

p.94.
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