感想メモ

【本】和田光弘(2019)『植民地から建国へ:19世紀初頭まで(シリーズ アメリカ合衆国史①)』岩波新書.

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目次は以下の通りです。

第1章 近世大西洋世界の形成
第2章 近世大西洋世界のなかの英領北米植民地―ヒト・モノ・カネ(
第3章 アメリカ独立革命の展開
第4章 新共和国の試練

アメリカ合衆国史シリーズを読もう(一部読み直し含め)と思います。
今回は一冊目。
植民地期から19世紀初頭まで扱われています。

アメリカが西洋社会に発見される以前の歴史も含め、大まかな流れが学ぶことが出来ます。同時に、大西洋史を含めた、歴史学のトレンドの変化によって解釈が塗り替えられている様子も感じ取ることが出来ます。

三点ほど、印象に残った点を記録しておきます。

一点目
アメリカ合衆国という国家体制の原理の成立過程を実感できる点です。

本来は、「国」を意味するステイトを複数束ねる組織体においては、紐帯が脆く崩壊する事例も歴史上散見されるなかで、アメリカの連邦システムは、南北戦争の試練に耐えて今日まで機能し続けているのである。

p.ⅹⅷ.

さらに、アメリカ植民地を包含するイギリス第一帝国の「の近世的なコングロマリット国家」としての様態が「50のステイトが一人の大統領の下に集塊した今日の連邦国家、アメリカ合衆国に受け継がれていると見ることも可能かもしれない。」(p.40.)という指摘は植民地時代と独立後をつなぐ視点のようで、印象に残りました。

二点目
先住民の迫害、黒人奴隷への非人道的な扱い、広がるアメリカの国土などの関係性が描かれています。

かくして北米対立において、三人種は不幸な形で遭遇した。先住民を「清掃」した「フリーランド(自由な土地・ただの土地)」に、本国(そして他のヨーロッパ諸国)の余剰人口が植え付けられ、不足する労働力を補うために黒人がアフリカから収奪され、強制的に植民される。この人的システムによって、中核の諸問題は帝国の周縁部、さらに外部へと転化され、先住民と黒人は莫大な血のコストの負担を余儀なくされたのである。

pp.65-66.

1619年のヴァージニア植民地において、自治的議会の創設と最初の黒人奴隷が誕生したこと(p.32.)を含め、アメリカの影の部分に注目せざるを得ないです。

三点目
アメリカ人としての意識がどこで出来たかというナショナルなアイデンティティの生成過程について、詳しく書かれています。

ソフト面たる「意識」のレベルでアメリカ人としての一体感、つまりアメリカ人意識が独立革命前にすでに成立していたかとの問いに対しては、たとえば新聞を史料として用いた計量的研究があり、それによれば、英領北米植民地を一体として言い表すの出現が一八世紀半ばすさから伸びており、一三植民地を結びつける共通のアイデンティティが独立革命に向け て強まっていったことが確認できるとされる。しかし少なくとも一七六〇年代半ばまで、その共通のアイデンティティのなかでイギリス人 の意識の占める比重は依然大きく、当時有されていた植民地の一体感は、むしろ本国というモデルを介して各植民地が社会的・文化的に 収束した――すなわち「イギリス化」した――結果と捉えることができる。

pp.99-100.

関連して、独立宣言は当初、政治的「聖典」などではなかったこと、それが、やがて一八一二年戦争(米英戦争)を契機とするナショナリズムの高まりとともに、称えられる存在となってゆくこと(pp.114-115.)であったり、「ワシントンのような英雄や国旗など、さまざまな シンボルが国民化のために総動員されることにな ったといえる。 国民化は、中央のエリート層、す なわち「公式文化」の側からの操作」(p.188.)などが必要とされたことなどは、印象深く思いました。

いずれにしても、「そもそも君主の存在しない共和制国家では、国家 という抽象的な存在それ自体に対して直接、忠誠心を抱かせねばならない。」(p.188.)なかで、「想像の共同体」を想像するのイメージが人為的に作られた側面があることがよく分かります。

その他
・アメリカ独立戦争は、南北戦争やベトナム戦争などと異な り、誰からもどこからも異論の出ようのない「正当」な存在であるがゆえ、国民統合の装置、スタビライザーとして機能したこと。それゆえに、 独立革命を称え、その歴史に自らの存在を位置づけることこそ、マイノリティー女性などの勢力が、アメリカ社 会のメインストリームへと合流する効果的な手段であったこと。(pp.134-135.)
・独立革命期には、「民主主義」の語が登場しなかったこと。そもそも当時、民主制(デモクラシー)の語は、本来、民衆の力・支配を意味し、やや急進的な響きを帯びていたおり、人々が もっぱら口の端に上らせたのは「民主」ではなく、「共和」の語であったこと。(p.161.)
なども米国の理念がまさに「創られる」続けるプロセスを物語るものだと感じました。

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